感情は諸刃の剣

 

 

「あいつはいくら怒鳴っても仕事を覚えないなぁ」
「部下が言うこと聞かない時は、感情に任せて怒鳴ってやれば、ビビって素直に言うこと聞くもんなんだよ」
 
 
こんな風に思ったこと、ありませんか?
 
 
多くの人が仕事において、感情に任せた行動を取っていると思います。
 
「私は何があってもいつも冷静に対処してるわよ!失礼ね!」
と言いつつ実は感情的になっている人はけっこう多いんです 笑
 
 
別に感情的なことが悪いことで、ロボットのように無機質になれと言っているわけではありません。
 
感情は人間の原始の部分に根ざしたものであり、人間が生き物である限り、
完璧に感情をなくすことは不可能でしょう。
 
 
ある調査では、決断をする場面においては本能的なもの、つまり感情や勘といった右脳を
使う能力が大切であるという結果に至ったそうです。
(事故により右脳に傷を負った人の行動を観察したところ、データの分析など左脳を使う作業は
問題なくできましたが、データをもとに決断を下すということが全くできなかったそうです)
 
 
 
ただし、感情は「動物」(※)としての人間が持つもの。
 
そして感情は、周りの人ではなく、自分自身にとっての利益・不利益が原因で爆発的に発生します。
 
つまり自分にとって嫌であれば怒り・悲しみ、自分にとって良ければ嬉しい。
他人がどうであろうと関係はない。
 
 
「人が殴られるのを見て怒りがこみ上げることがあるじゃないか!」
 
確かに。
でもそういう時って、知らず知らず被害者を自分や家族に置き換えて考えていませんか?
 
 
そして一度怒りがこみ上げると、今度は感情が一人歩きしてしまい、
元の問題からかけ離れてしまう。
 
 
ちょっと昔、オヤジ狩りのニュースを見て異常に興奮しだすお父さんは多かったですよね 笑
 
脅迫・強盗は何千年も前から行われているのに。
 
周りの人は「お父さん、なんでそんなに怒ってるの?」と不思議に思ったはず。
 
 
 
感情の恐ろしいところは、周りの人にも波及してしまうこと。
 
明日、会社や何かの集まりに参加したときによく観察してみて下さい。
 
誰かが大声で怒っていると、知らず知らず周りの人もイライラしてくるはず。
 
 
感情の力(特に怒り)はとても強いので、周りの人に伝播してしまうのです。
 
 
そしてそれは集団の崩壊につながっていきます。
 
 
 
人間は常に社会の中で生きています。
 
社会とは、人の集まり。
 
仕事をしてお金をもらい、食材を買い、情報を仕入れる・・・
人間が生きていく上で、社会つまり人と関わるということは必要不可欠です。
 
 
ある程度大きなことをしようと思ったら、自分ひとりの能力では限界があります。
そうすると、人に協力してもらう必要がある
 
あなたが周りの人だったら、自分のことばかり考えて一人で怒ったり笑ったり
している人に力を貸したいと思いますか?
 
絶対思わないはず。
 
無理して協力しても、身勝手な相手にだんだん腹が立ってきて、
最後はよくない結果になるでしょう。
 
私の周りにも、身勝手なのにたくさん友人がいる人なんて見たことありません。
 
 
 
何か大きなものを得たい!
  ↓
そのためには、大きなことをする必要がある。
  ↓
自分だけの力では無理なので、人に協力してもらう必要がある。
  ↓
協力してもらうには、その人の利益も考えなければならない。
  ↓
相手の立場になって考える必要がある。
  ↓
自分自身の利益・不利益から生じる感情は邪魔になる。
 
 
人に協力してもらおうと思ったら、自分のことはいったん横に置いて、相手が何を欲しているか、
冷静に考えてみる必要があるでしょう。
 
 
 
ただし、感情を全く無くしてもいけません。
ロボットみたいな人は逆に怖いですから 笑
 
 
ここで感情をうまく使う必要がある。
 
 
自分よがりの感情は、周りの人との溝を広げます。
 
ただし感情は、同じ感情を持つ人同士を強く結びつけ、感情のエネルギーを倍増させる力がある。
 
楽しい人同士が集まるととんでもなく楽しいし、
悲しい人同士が集まるとどんどん暗くなってしまう。
 
 
だったら、まず冷静に相手の感情を読み、自分もそれに合わせればいい。
 
相手が嬉しいのだったら、自分も嬉しく振舞い、笑う。
相手が悲しいのだったら、自分も最初は悲しく振る舞い、
徐々に明るい方向へ持っていく。
 
 
きっと恋愛でも使えるはず 笑
 
 
感情をうまく使った人物にヒトラーがいます。
 
1920年代のドイツは第一次世界大戦で負けたために多くを失い、また世界恐慌によって
人々の生活はボロボロになっていました。
 
人々は自尊心を失い、日々生きていくだけで精一杯。
心のどこかで、自分たちを奮い立たせるものを必要としていたのでしょう。
 
そこでヒトラーは「我々ゲルマン民族は優秀だ!他の民族はそれを邪魔しているから追い出してしまえ!」
と強烈で感情的なメッセージを発しました。
 
自尊心に飢えていた人々はその考えに飛びつき、ドイツ国内のゲルマン人同士が異常に強い
感情エネルギーを持つようになります。
 
やがてその感情は爆発的なエネルギーとなり、周りの国々を圧倒するまでになったのです。
 
貧しく虐げられていた労働者や農民が、「共産主義」という思想のもと、富裕層に対する怒りという
感情を強大な力に変え、世界の半分を共産主義国で支配したのも同じことではないでしょうか。
 
 
ただし、同じ感情の人が何人集まろうと、周りの人にとってはやはり近寄りがたいもの。
 
 
ゲルマン人至上主義はドイツ国内では圧倒的人気を誇り、その感情のエネルギーを
周辺諸国の侵略に利用しました。
 
そしてそれが欧米諸国の反発を招きました。
 
その後の展開は皆さんご存知の通りです。
 
共産主義国では金持ちはおろか同じ平民の間でも粛清(強制収用や殺害)が横行し、
その恐怖が他の民主主義国同士を団結させ、共産主義に対抗させることとなってしまいました。
 
 
感情はうまく使えば大きなエネルギーを生み出します。
 
でも、それは諸刃の刃。
 
 
まずは深呼吸をし、周りの人が自分に求めているのは何か、考えてみましょう。
 
あなたの怒号を欲している人なんていないはず。
 
 
 
※ 感情は大脳の中の、大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)という部分で生み出されます。
大脳辺縁系は大脳の中心部分で、犬や猫、鳥などはもちろん、魚類にも見ることができます。
中心といっても、実は大脳の容積のほとんどが大脳辺縁系。
人間の脳と犬・猫や鳥との構造の違いは、大脳辺縁系の上に大脳皮質という層があるかないかです。
しかもこの大脳皮質、厚さの平均は2.5mmしかありません。
つまり、人間の脳も他の動物の脳も、構造的には厚さ2.5mmの層の分しかないのです。
この2.5mmが理性を作る。
本能と、そこから生まれる感情が、いかに強い力を持っているかがわかります。
 

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