ヨーガに生きる
―中村天風とカリアッパ師の歩み
おおい みつる 春秋社 昭和63年出版
この本のポイント
�� 物事の考え方に関する、ちょっとした革命が起こるかもしれません。
�� 悩んだときに読むだけでも、スッキリいい気分になれます。
�� 宗教の勧誘ではありません（笑）
ヨーガって、ヒンズー教？
カリアッパ師って誰？
もしかしてこのホームページ、宗教の勧誘してるのか！？
ご安心下さい、僕は無神論者です（笑）
ごめんなさい。
いきなりヨーガと言われても、ビックリしますよね。
最近シェイプアップの方法として取り上げられることの多いヨーガ。
「じゃあダイエットの本？」
いいえ違います。
「じゃあやっぱり怪しい宗教の本か！」
それも違います（笑）
この本は敢えて言うなら、哲学としてのヨーガを、それを学んでいくものの視点から説明したもの。
ヨーガとは宗教というよりも、哲学に近い。
最低限の質素な暮らしをし、日々修行に励み、物事に対する新しい考え方を得る・・・
これを繰り返すことで、物事に対する考え方が少しずつ変わっていきます。
この本の主人公、名を中村三郎 (1876 – 1968、のちの中村天風ﾅｶﾑﾗﾃﾝﾌﾟｳ ) といいます。
実在した人物で、なんと日本初のヨーガ行者。
しかもヨーガの本場ネパールに赴き、カリアッパ師という、ヨーガ行者の中でも最高位の方から
教えを受けました。
そして現地の行者でも滅多に習得することのできない教えを習得し、中国の孫文の最高顧問に
なったり、多くの政財界の実力者に教えを説いた人です。
名前を聞いたことがある方も多いんじゃないでしょうか。
ちなみに天風氏、若いころはかなりやんちゃだった様です（笑）
本は、結核を患っていた中村三郎が、エジプトでカリアッパ師と会うことから話は始まります。
当時結核といえば不治の病とされ、かかれば必ず死ぬとされていました。
結核患者にできることといえば、できるだけ栄養のあるものを沢山食べて、より長く生きるということだけ。
どんなに先に延ばしても、死が避けられない病気でした。
三郎は結核感染をきっかけにアメリカで医学を勉強しており、彼自身、自分の病気の恐ろしさを知り、
そして死を覚悟していました。
ところが、エジプトで偶然あったカリアッパ師との会話が彼の人生を大きく変えることになります。
三郎がまだ一言も声を出してもいないのに結核を患っていることを言い当てたカリアッパ師に、
三郎は不思議な興味を持ちます。
そしていろいろなことを話すうちに、師の村についてこないかと誘われます。
死を覚悟していた三郎は、半ばヤケになってついていくことにしました。
着いたところはネパールの山奥、1000年前から文明の進歩が止まってしまったような村。
そこで三郎は結核にも関わらず、修行をつむようにカリアッパ師から師事を受けます。
その生活で出会うのは、西洋文明に慣れきっていた三郎には奇異なものばかり。
結核患者には動物性の栄養が大量に必要なのに、毎日与えられる食事はほんの少しの干し野菜だけ。
男女とも裸に近い格好で歩き、カリアッパ師の姿が見えると、皆地面に突っ伏して頭を下げ、
微動だにしないような始末。
最初は全てに戸惑い、村人たちを野蛮人扱いしていた三郎ですが、カリアッパ師の教えを実践して
いくうちにだんだんと物事に対する考え方を変えていきます。
一つまみの野菜しか食べないのは、そうすることで体が本来持つ免疫機能を活性化させるため。
（三郎も結局、治療もしないで結核が完治してしまいます）
村の生活が原始的なのは文明が進化していないのではなく、常に真理を学び、無駄なものを必要としないから。
その他にも、耳をつんざくような滝の音の中で小鳥のさえずりを聞き取る方法や、
空の雲が流れる音を聞く方法、なぜヨガでは体に苦痛を伴う体勢で瞑想を行うのかなど、
普段読むような哲学書や自己啓発書とは違う、新しいモノの見方を教えてくれます。
そして読み進めていくうちに、いかに私たちが無駄なものに心を動かされ、エネルギーを
使っているかを理解するでしょう。
読めば読むほど複雑になり、一般人には理解しづらい思想と違い、ヨーガの真理はシンプルでわかりやすい。
最初はまったくの素人である中村三郎の視点から見た文章構成なので、まるで自分がその修行を
受けているような感覚で、どんどん読み進めていけます。
一章読み終えるごとに、心の中が洗い流されていくような、必要のないものが取り払われていくような
不思議な爽快感を感じます。
現代の私たちの考え方は、意外なほど西洋文化の影響を受けています。
大量にモノを消費し、人を支配したがり、うまいものを食べたがる・・・
それに対し、ヨーガの思想はヒマラヤの山奥で生まれたもの。
物事に対するアプローチの仕方が根本的に違います。
私たちが当たり前のように悩むことを、一発で吹き飛ばしてしまう力があるのです。
物事に対するいろんな視野を持つためにも、とても面白い本だと思います。
こんな人にオススメ
・ 普段から悩み事が多い人
・ ダイエットが続かない人
・ 他の人とは違うモノの見方をしたい人
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