考える技術
大前研一 講談社 2004年出版
この本のポイント
�� 問題を正確に捉え、解決策を考え出す思考能力の鍛え方を学べます。
�� 解決策を実行するために、どうすれば人に納得してもらえ、協力して
もらえるかを学べます。
�� 上記の2つは仕事をする上で必要不可欠です。
「なんでこの人はあんなに斬新な考え方ができるんだろう」
「あの人の話すことって説得力があるなあ」
仕事をしていて、またテレビなどを見ていて、こう思うことは多いと思います。
みなさんの周りにはかならず一人や二人、仕事のできる人がいるはず。
なぜ彼らは仕事ができるのでしょうか？
経験豊富だから？
でも、世の中には50歳、60歳になっても頼りない人はたくさんいます。
また若くして年収数千万円という人もたくさんいます。
そしてそんな人たちの中でも、ずっと続けて成功している人もいれば、一発屋で終わる人もいます。
何が違うのでしょうか？
成功するために必要な能力とは、他人が注目しないものを利用する能力であったり、
話術や文章力であったりと、その人が活躍する分野によって違うと思います。
しかし、どのような仕事をする上でもほぼ確実に必要なものがあります。
それは「人を動かす力」
商売の基本は、
相手にモノ・サービスを提供し、その対価をもらう
ということ。
この基本は、どんなに経済の仕組が複雑になろうと、変わることはないでしょう。
つまり商売の才覚とは、「何を提供すれば相手は喜んで対価を払ってくれるか」がわかること。
別の言い方をすれば、相手にお金を払わせる術を知っているということ。
「顧客を動かす力」とも言えるでしょう。
また、職場の人たちを動かす力も大切です。
人間が一人でできる作業には限界があります。
ビジネスが大きくなればなるほど、国への届出や会計業務、広報など、さまざまな作業が
必要になってきます。
そしてそれを全部一人ですることは不可能。
たとえあなたが天才的な頭脳を持ち、一睡もせずに1年365日働き続けたとしても、実際に起こせる
アクションの量でいえば、優秀な社員３人の会社にも勝てないでしょう。
いくら素晴らしいアイデアがあっても、アクションを起こしてそれを形にしなければ、誰も
お金を払ってくれません。
実際の作業にはどうしても必要最小限のマンパワーが必要。
そしてそのためには他の人を動かし、自分に協力してもらう力が必要です。
お金を払えば協力はしてもらえるでしょうが、仕事を丸投げしたり、いつも怒鳴ったりして
いれば人はあっという間に離れていきます。
辞めた人を補うために新しく人を入れるにしても、お金はかかるし、仕事を覚えてもらう間は
その人はもちろん、仕事を教える人も仕事ができません。
また、もしあなたが会社勤めだとすると、同じ部署や他部署と組んでプロジェクトを遂行
することは多いでしょう。
仕事をする上で、「人に協力してもらう」ということは必要不可欠なのです。
人間は一人では生きていけません。
社長であろうと、サラリーマン、主婦であろうと、必ず社会とかかわって生きています。
生きていく上で「人を動かす力」は必要不可欠なのです。
この本では大前研一氏がマッキンゼー（※）で働いていた頃に、コンサルタントとして
いかに顧客企業の問題点を発見し、証明し、最終的に解決に向けて顧客に動いてもらうか、
その思考パターンやプレゼン・仕事の仕方を教えてくれます。
まずはどのようにして問題点とその解決策を発見するかを教えています。
問題点を見つけることができないと、正しい解決策も見つかりません。
例えば、魚を取りにくる猫をひたすら追いかけても、魚がそこにある限り猫は繰り返し
あなたの魚を狙います。
この場合の問題は、猫が魚を狙うことではなく、猫に狙われやすい魚を置いていることです。
よってここで取るべき行動は、猫を追い払うことではなく魚を安全な場所に移動させること。
これはごく簡単な例ですが、この本の前半では物事をどのように見るか、解決策を見つける
ために普段からどういう訓練をすればいいのかなどを、実際の例を通してわかりやすく提示しています。
しかし、いくら自分の中で「コレだ！」という解決策がわかっても、相手が納得して
くれなければ意味がありません。
コンサルタントの仕事はあくまで提言であり、実際にアクションを起こすのは顧客です。
顧客が納得してくれないと、どんなにすばらしい解決策も絵に描いた餅です。
そこで大前氏はどうすれば相手を説得できるか、そのためにどのようなデータを集め、
どのようにプレゼンすれば良いかを説明しています。
普段の生活でも、人に協力してもらうためには、相手が「絶対正しい」「これなら協力したい！」
と思うような内容でなければ、その人との関係は長続きはしないでしょう。
「人を動かす力」とはビジネスだけでなく、実生活においてもとても大切な能力なのです。
この本は大前氏の具体的な経験を通して、その能力のつけ方をわかりやすく教えてくれています。
「もっと大きなビジネスをしたい」「周りの人たちとの関係をもっと有意義で深いものにしたい！」
「頑固な上司を説得したい！」
そんな方に絶対オススメの本です。
※ マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)
アメリカに本社を置くコンサルティング会社。世界トップクラスのコンサル会社であり、
フォーチュン誌が発表する世界トップ企業１００のうちの３分の２はマッキンゼーの
顧客であるとされる。
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